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阿部健治郎四段指導対局(2010/12/18)


東京将棋会館入り口。
2010年12月18日。
当面は将棋関連のイベントに参加するつもりはなかったのですが、ふと、阿部健治郎四段の指導対局を発見してしまい、行って参りました。
阿部健治郎四段は、プロになったばかりで今年の新人王戦で優勝し、今後が嘱望される若手の急先鋒です。
オレが彼に興味を持ったのは、今年の王位戦のネット中継の解説を彼が担当したときでした。
新四段のその正確な読みに、すごく驚きました。
コレはスゴイ新人が出たぞと。
そんなわけで、今回の指導対局を申し込むことにしました。
前回の山崎七段の際に六枚落ちは卒業で良いと言われたので、真に受けて四枚落ちでお願いすることにしました。
指導対局に慣れている山崎七段と比較して、若い阿部四段はおそらく緩めてくれません。
しかも四枚落ち。
あっという間に、「ぎゃふん」てなことになるでしょう。
そこで、前回よりもマシな作戦を立てていくこととしました。


棋譜用紙。
そして、さらに。
将棋の実力はかなりヘボいですが、人生の実力は割とスゴイびゃっきーです。
こんなものを作ってみました。
棋譜用紙。
これで棋譜を覚えられなくても、レポートが書けます。
しかも、この棋譜用紙は優れています。
何が優れているかと言うと、先手と後手の「▲」「△」をあらかじめ表に書き入れています。
さらに、棋譜の数字と漢数字がわからなくならないように、左上に将棋盤を配置しているところが優れています。
こういうのは分かっているつもりでも、その場になるとわからなくなったりするものです。
また、数字と漢数字の順番がわからなくならないように一言「右の表に7六歩などと書き入れます。」と注釈を入れています。
もう完璧です。
ところが、やってみると、なかなか大変です。
相手の指し手を書き忘れて、自分の手を連続して書いちゃったり、△同歩、▲同銀、△同金とかやってると、そこらへんズゴッと抜いてしまったりします。
気付いた瞬間修正しますが、余計な時間がかかります。


やっぱり左右がスカスカ。
さて、前段はそのぐらいにして、対局内容を紹介しましょう。
まず「よろしくお願いします」と挨拶して席につきました。
阿部四段に「すみませんが、四枚落としていただけますでしょうか」とお願いします。
何度も言うようですが、「四枚落ち」などという初心者は指導対局になど来ません。
そして「覚えられないので、譜を採ってもよいでしょうか」とお願いします。
もう最強の場違いと言うか、なんでこんな人迷い込んできちゃったんだろうという感じです。
それでも阿部四段の許可をいただいて、スタートです。


今回は四間飛車。
今回は、四間飛車にしてみました。
よくわからないという人は図を見てください。
左から4つ目のラインに飛車を持っていくので四間飛車です。
角道が一瞬止まりますが、相手は駒が足りてないので、すぐに角道が通り、さらに位が取れるだろうということで。
今回のテーマは敵戦力の分散です。
まず、飛車はもちろん6筋を狙っていますが、同時に隙があれば浮き飛車にして、2筋も狙っています。
もし相手の玉が6筋、7筋方面に来るなら、2〜5筋の歩は全く突かずに戦います。
9筋の歩は9筋を狙っているわけではなく、角の活用を見込んで上がっています。
前回と似たような格好ではありますが、狙いがある分、少しはマシな作戦だと思うのですが。
いずれにせよ、これで攻撃の基本形は整いました。


さあ防御も整いました。
図は少し進んだ局面。
相手が右辺に手をかけてきたので、こちらも右辺に手をかけて、防御体制が整いました。
ここでのポイントは、自分的に重要な順から、

1.左銀が立ち遅れないように左銀を7八に上がっておく。
2.玉の頓死を避けるべく、1筋の歩を一つ突いておく。
3.相手が4筋の位を取ってきたので、3筋の歩をついて、銀で受ける。
4.桂が跳ねて来たので、2筋の歩を突いておく。
5.2〜3筋からの攻撃を受けて、金を上がっておく。

といったところです。
先ほどは「2〜5筋の歩は全く突かずに戦います。」と書きましたが、敵の玉が右辺にあるので、右をしっかりと固めます。
敵戦力も右に固まっているので、左から飛車の突破を狙います。
7八にいる銀を前進させて、攻撃を開始します。
敵も△3五歩から様子を見てきますが、相手にせず、銀を進めます。
敵が△3六歩としてきたところで、▲同銀と取り、△3五歩と抑えてきたところで、▲2七銀引き。
先ほどまで桂のラインに入っていて少し気になっていた銀が、桂筋から逸れて、右辺は良い感じ。
左辺は銀の進出の都合上、7筋から攻撃することにしました。


7筋から攻撃。
さてここからですが、金に銀をぶつけていっても、▲7四銀、△同金、▲同飛、△7三歩打で収まってしまいます。
そこで、▲9七桂と跳ねて、次の▲8五桂を見せて、金にどいてもらうか、歩を使ってもらうかしようと考えました。
ところがそこで、△6二銀引き。
こういうのが見えません。
あくまで7三の地点で収めようということです。
それならばで、▲6四歩と突いていきました。
△同歩、▲同銀、△同金、▲7二飛成。
銀を相手にあげるのがイヤですが、最後の▲7二飛成が、銀桂両取りになるから、まぁいいかと思って突破することにしました。
銀桂交換で龍も作れて、ここらへんではかなり上出来だと思っていました。


飛車が成ってたぶん成功。
この後、△5三銀上、▲8一龍、△5五歩となって、▲6一龍と金に当てました。
今見ると▲8三龍が良かったかな。
▲6一龍の狙いは▲6三歩と垂らして、▲6二歩成のと金作りです。
ところがここで、△7六歩が来ます。
うおっ。
次の△7七銀打ちで、角は抑え込まれるし、6六に成り返られて、7七にと金が成ってくるのも厳しいです。
そこで、角の活用を図る、▲8五桂。
今度△7七銀打ちが来ても、▲9七角と上がって大丈夫。
その後、いくつかやり取りがあって、次の図。


阿部四段が△7八銀と打ったところ。
阿部四段が△7八銀と打ってきました。
△7七銀ばかり考えていたので、全然考えていませんでした。
これは8七に成り返られて大変です。
▲6三歩成、△同歩、▲同龍、△6四金、▲8三龍として、8七の地点を守ります。
その次に阿部四段は△5四金左としてきました。
これは▲9七角からの角の活用を受けたものだと思うのですが……。


オレは将棋に向いてません。
次のオレの一手は「▲2五歩」
敵の4五金がどいた瞬間、右辺から動く、△同歩なら▲2四歩と垂らして、△同桂なら▲2六歩として桂を捕獲、この将棋で最もイカした手だと思いました。
あとで阿部四段から指摘されますが、これが敗着だそうです。
あー、オレ将棋向いてねー。
手抜かれて△7五金。
次の△8六歩がヤバイ感じ。
▲7三龍、△6四金となったところで、受付の方から「80分経ったので、そろそろ」と言われました。
うわー、オレどんだけ時間かけちゃってたんだよ。
しかもよくわからない局面。
「あー、もう全然わからねー」と言って、▲6七桂打。
これは正直ちっとも読んでません。
なんとなく、5五に跳ねたときに玉に当たるし、角道も通るからいいかな、程度。
そんな手が通用するはずもなくあとはバタバタと進んで、以下投了図。


投了図。
あの「▲2五歩」を一手も動かすことなく負けました。
「負けました」と告げると、阿部四段が「あの▲2五歩のところがよくなかったですね」と言いながら、手を戻し始めました。
それはムリ。
戻せません。
そんなヤツは来るなとオレだったら言いたい。
「すみません、戻せません」と言うと、「あ、そうですか。私が戻せます」と言って阿部四段が戻してくれました。
あの場面では、▲6八金としておいて、△8九銀成と銀を成らせて、▲9七角として、香は取られますが、▲7四歩から地道にと金で攻めるのが良かったということです。
これなら7七にと金も作らせずに済みます。
「途中は銀でうまく攻めて良かったんですけど」と一言だけお褒めの言葉をいただいて、自信を喪失しないようにしていただきましたが、ホントにオレは将棋に向いてないな、と。
時間もなかったので、そんなところで終了となりました。

が、今回の本題は実のところ四枚落ちではありません。
最後に「王位戦のネット解説、すごく感動しました」と、伝えました。
これが本題。
すると阿部四段は少し嬉しそうに「ありがとうございます。なんか評判よかったみたいで」と言ってました。
まぁ、評判いいだろうな、あのネット解説は本当にすごかったからな。

伝えることも伝えたので会館を後にしました。
将棋は指している間ずっと緊張状態が続くので、終わった後、気持ち悪くなります。
そんなところも向いてない。
気持ち悪いは、負けるわで、ぐったりしながら千駄ヶ谷駅にとぼとぼと歩いて帰りました。
次はどうするかな。
しかし四枚落ちでプロに勝てるようになるとは思えんな……。


後日談。このレポートを作成しながら感じたのが、なんか将棋が地味だな、という印象でした。
元来将棋ってそういうものなんだろうけど。
でも、先日の山崎七段のときは割と派手な感じがしたなぁと。
「次の一手」集みたいな局面が次々と展開していたような。
「さぁどうする、どうする?」みたいな。
山崎七段はもしかして、指導対局がかなりうまいのでは?

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